8月6日、ILO(国際労働機関:International Labour Organization)主催のシンポジウムがフィリピン・マニラにて開催され、日本労協連の田中羊子専務(センター事業団東北復興本部長兼任)が招聘されました。
フィリピンでは2013年11月、ハイエン台風(フィリピン名・ヨランダ台風)の来襲により死者約6200人、行方不明者約1800人、損壊家屋約114万戸、被災者総数1600万人以上に及ぶ甚大な被害な被害が発生。当地では、今なお復興への努力が続けられています。
今回のシンポジウムは、雇用の創出を通じて復興支援を行ってきたILOが「パートナーシップの強化―ハイエン台風後の復興の最前線における暮らし」(Strengthening Partnerships: Livelihood at the Forefront of Recovery Following Haiyan)と題して開催。「ディーセント・ワーク」の創出及び普及と災害からの復興をテーマに、フィリピンで復興支援に取り組む関係者と、日本で東日本大震災からの復興支援に取り組む関係者が参加し、お互いの経験を共有しました。
田中専務は、昨年2月に日本で行われたILO太平洋地域総局主催のシンポジウム(「仕事と復興~自然災害から立ち上がるために、必要なことは何か」)に参加し、東北復興本部による取り組みを紹介。ILO駐日事務所の上岡恵子代表が、そうした「東北でのワーカーズコープの実践は、自然災害が多いアジア、太平洋諸国でも貴重なもの」と評価し、フィリピンでのシンポジウムに推薦。日本からは他に、元釜石市副市長の嶋田賢和氏(財務省理財局総務課長補佐)と、宮城県亘理町で古い着物地をリメイクした小物入れ等の製造販売を通じて復興支援を行っている株式会社WATALISの引地恵代表が招聘されました。
シンポジウムはマニラのインターコンチネンタル・ホテルのグランドボールルームで開催され、数百名が参加。朝9時から夕方4時まで、三つのパネルを中心に行われました。主な参加者にはフィリピン政府関係者(労働雇用政策・社会福祉政策の担当者や外務省職員)、ハイエン台風被災自治体関係者、国連職員、主な支援国関係者(ノルウェー・イギリス等)、フィリピン内外の復興支援NGO職員、研究者、マスコミ関係者等が含まれ、日本からは上記3名の他に外務省職員、在フィリピン日本大使館職員、JICA(国際協力機構)職員等が参加しました。
当日のプログラムはフィリピン国家斉唱から開始。続いてILOフィリピン事務所のローレンス・ジェファーソン(Lawrence Jeff Johnson)代表がシンポジウム全体のテーマについてスピーチしました。基調講演は、労働雇用省のロザリンダ・バルドス(Rosalinda Baldoz)長官のメッセージを、同省のレベッカ・チャト(Rebecca C. Chato)次官が読み上げました。
田中専務は、「国境を超えた教訓―日本とフィリピンにおける災害対応からの知見」(Lessons across Borders: Learnings from Disaster Response in Japan and the Philippines)と題された第一パネルに登壇しました。他の登壇者は、日本からの上記二名と、レイテ島サン・イシドロ町のスーザン・アン町長、セブ島を拠点に復興支援を行っているNGO代表のアラン・モンリール氏。それぞれ各10分の報告をし、その後は全員で質疑応答及び意見交換を行いました。田中専務は「(東日本大震災からの)4年間で7地域、約100人が働く場所をつくりだした。地域に眠る豊かな技や力が最大の資源。地域の困難は増している。被災者・困窮者がその解決の担い手になってきている」と報告。日本からの参加者は、嶋田氏が被災自治体における公的支援について、また引地氏が民間企業による雇用創出と復興支援について、それぞれ報告しました。フィリピンからの二名の報告と合わせて、自治体・民間企業・NGO及び労働者協同組合それぞれの立場からの、様々な復興への取り組みが紹介されました。質疑応答でも、三つのセクター(公的セクター・民間セクター・非営利セクター)による復興支援の相違や、相互の連携について質問があがり、また災害対応における日本とフィリピンの制度的相違や共通の経験等についても議論されました。
また、日本労協連は、上記シンポジウムとは別に、マニラを中心に活動する労働者/社会的協同組合関係者とも会合を持ちました。会合には、労働者/社会的協同組合の代表や協同組合関連政府機関(Cooperative Development Authority)の担当者を中心に、10人ほどが参加。日本とフィリピンにおける労働者/社会的協同組合の現況について、情報・意見を交換しました。
フィリピンでは、障がい者の就労支援に労働者協同組合が活用されており、社会的(多目的)協同組合の性格が強いとのこと。とりわけBigay Buhay Multipurpose Cooperative (BBMC)は老舗の社会的(多目的)協同組合で、来年には創立25週年を迎えます。
また、The Center for Community Transformation Group of Ministries (CCT)の事務局長も会合に参加。同団体は、聖職者を中心に労協・生協・マイクロファイナンス等を組み合わせて運営しているコミュニティ協同組合(ないしは協同組合コミュニティ)で、参加メンバーは約5000人にも上るそうです。会合には他にも、太陽光発電などのクリーンエネルギー事業を展開している労働者協同組合の代表が参加し、日本労協連の展開しているBDF事業との関連で意見交換も。さらに、ここ最近日本労協連と韓国労働者協同組合連合会や韓国地域自活センター協会との関係が急速に深まっていることを伝え、「CICOPAアジア」の創設を将来的な目標として、日本・韓国・フィリピンを中心にアジアにおけるワーカーズコープのネットワークを広げていこうと話し合いました。