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追い風、向かい風(にじ 2017 秋号 No.660 オピニオン)

追い風、向かい風

濱田 武士
にじ 2017年 秋号 No.660

 2012年は、国連が定める国際年として国際協同組合年になり、2016年11月30日には「協同組合において共通の利益を形にするという思想と実践」がユネスコ無形文化遺産に登録された。世界の協同組合陣営にとって、これは「追い風」である。

 ところが国内では、最大級の協同組合グループであるJAを標的にした2016年4月1日からの改定「農協法」の施行、2016年11月29日の「農業競争力強化プログラム」の決定、2017年5月12日の「農業競争力強化支援法」の成立など、向かい風が強い。しかも、向かい風は突風。

 その渦は霞ヶ関にあり、外から吹き込んでくるはずの「追い風」を跳ね返したのであった。なんとも寂しい話である。

 官邸主導により進められた農業・農協改革のデタラメぶりは、聞けば聞くほどよく分かる。だが、メディア報道で知った人達は、せいぜい「ようやく悪玉が成敗されている」ぐらいにしか感じていなかっただろう。JAに関して負の印象を与える断片的な内容が流布され続けてきたゆえに、農協法改定など一連の法整備が悪行を改善するかのような改革だとしているのだから、専門知識がなければ「良いことだ」と思うのも当然である。メディア演出は本当に怖い。

 ところが、加計学園問題が取りざたされると、「行政がゆがめられた」と官邸主導による行政支配の問題が浮き彫りになった。7月24、25日の国会閉会中審査では加計学園の獣医学部の設置をめぐって安倍晋三首相の口利きがあったかどうか、などが追及されたものの釈然としないまま今に至るが、この間、少なくとも官邸主導の問題だけでなく、国家戦略特区や規制改革推進会議の虚飾についても、触れられるようになった。風向きが変わってきたように思える。ただ、これもメディアによる演出。少なくとも彼らが以前の問題報道を正すことはあり得ない。

 さて、「協同労働の協同組合」に法人格を与える法制化の動きが活発化していると聞いているが、どうなるのだろうか。

 法制化となれば、協同労働組織の運営に勢いづくと思う。法人格をもつだけでも意味は大きいが、法制度の内容がどうなるかも注目に値する。農協法の「協同」がねじ曲げられた分を取り戻すぐらいのものになってほしいものである。