国連が「世界ユース白書」で協同組合の果たす役割を評価(ICA記事 仮訳)
国連が7月2日に発表した「世界ユース白書」において協同組合が果たす役割が高く評価されました。国際協同組合同盟(以下、ICA)のウェブサイトにて、そのことが掲載されていますので、仮訳としてお伝えいたします。
国連は、2020年の「世界ユース白書~若手社会的起業家と2030アジェンダ~」において、協同組合が若手の社会起業家を支える役割を評価しています。白書では、まず社会的起業家について、若者の経済的自立と社会の発展が生み出すとし、そのうえで、「若者や女性といった社会的弱者に人間らしく働きがいのある仕事を提供する」、「組合員になることによって、生きるために必要な能力を構築し、社会における発言力を高めることができる」といった協同組合モデルの価値に触れています。協同組合運動は、成功した民主的運動とされており、インフォーマルセクター(※JCA補足:発展途上国で多く見られる露天商、廃品回収人、自転車タクシーの運転手などを指す)での失業や雇用不安など若者が直面する課題を解決するうえで、協同組合から多くのことを学ぶことができるとしています。
協同組合のビジネスモデルは、金融や相互扶助へのアクセスを容易にするだけでなく、(貧困層の人々が)インフォーマル経済からの抜け出す際にも大きな役割を果たすと記されています。ILOは次のように述べています。「協同組合として事業を行うことは、インフォーマルからフォーマル経済への道の一歩として見ることができます。多くの協同組合は、元々はインフォーマルな事業体として始まり、その後、成長して事業が安定的した段階でフォーマル経済の一部となったのです。」また、協同組合原則では、教育訓練と参加を通じて、若者の能力開発を進めることが明記されています。
白書では、協同組合運動という総括的な表現にとどまるのではなく、ICAや協同組合起業家に関するグローバル・ユース・フォーラム2020(以下、GYF20)のことも大きく取り上げられています。
協同組合の発展を通じたSDGs目標4(質の高い教育をみんなに)と目標8(働きがいも経済成長も)への対応
人を中心とした事業体である協同組合の存在意義は、社会の持続可能な発展の基盤を提供することにあります。白書では、協同組合は「人間らしく働くことのできる労働条件を提供し、仕事の経験のない若者のスキルを開発し、様々な理由で伝統的な労働市場での雇用を確保することが困難な人々の雇用にコミットしている」と認められています。協同組合のこうした側面は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標4(質の高い教育をみんなに)と目標8(働きがいも経済成長も)の達成に直接貢献しています。
こうした協同組合の包括的な特質は、事業体としての持続可能性と社会や環境への責任の両立を重視する若者の感性に響きます。したがって、協同組合は、健全に繁栄した社会の実現に向けて積極的に貢献したいとの思いを抱いている若い起業家にとって最適なビジネスモデルだと言えます。
若手社会起業家に活力を与える事業体としての協同組合
「世界ユース白書」は、2020年7月16日、ICA-EUパートナーシップ(#coops4dev)が開催した、国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)のオンライン・サイドイベントにおいて、イザベル・レガーレ氏が発表しました。彼女は国連経済社会局(DESA)のユースプログラム・ユニットで社会問題担当官を務めています。このイベントでは、若手の起業家が活用できる手段として、協同組合のもつ価値が大いに議論され、数々の講演者が協同組合で若者が活躍する事例を示しました。議論の中心となったのは、特にCOVID-19がもたらした数々の危機の余波の中で、「協同組合の特性」が若者のあらゆる場面での雇用にどう貢献できるかという話題でした。
協同組合によるユース・ウィーク(若者のための一週間)
この夏、若者たちの行動によって、ICAのソーシャルメディアが大きな注目を集めました。7月15日の「World Youth Skills Day」(世界青少年技能デー)と8月12日の「International Youth Day」(国際青少年デー)を記念して、ICA本部と世界のICA地域事務所が、若者と協同組合起業家を扱うコンテンツを共有したのです。中でも若者たちによる、GYF20のウェブサイトを周知するキャンペーン(このサイトでは、オンラインで視聴できる研修会や資料などが掲載されています)をリニューアルするとともに、前述のハイレベル政治フォーラム(HLPF)のオンライン・サイドイベント:「危機とその後における強靭な事業モデルとしての協同組合」の周知に取り組みました。
ICAは若者を重視し、特にICA-EUパートナーシップを通じて、若手の協同組合起業家を育成するために様々な取り組みを行っています。例えば、2020年2月にマレーシアのサラワク州クチン(アドボカシーのためのユース・アジェンダが採択された地)で開催されたGYF20)は、50カ国から180名以上の参加者が集まり、成功を収めました。その他には、「世界協同組合起業家(GCE)」と呼ばれる若い起業家のための実験的な育成プログラムの開発、さらには、#coops4devの調査チームは、現在、若者に関する世界的な調査報告書の作成を進めています。これらは、長年、協同組合の若者同士のネットワーク強化を進めてきた「ICAユース・ネットワーク」の支援のもと進められます。
※関連情報