大規模経営の成立条件 —日本型農場制農業のダイナミズムと苦悩
大規模経営の成立条件 —日本型農場制農業のダイナミズムと苦悩
安藤光義 編著/山浦陽一・大仲克俊 著
定価2,800円(+税) A5判上製/328ページ
本書の目標は、絶えざる状況変化に柔軟に対応しながら農地を集積して規模拡大を図ってきた農業経営の動態を、集落との関係を射程に入れながら、丹念に描き出すことにある。
水田農業の構造再編は、単に農地を借りて規模拡大をすれば問題が片付くというわけにはいかない。大規模経営が置かれている環境、特に集落との関係を抜きに構造政策を語ることはできないのである(本書序章より)。
【目次】
序章 日本型農場制農業を現場の視点から考える
1.はじめに
2.「日本型農場制農業」を検討する場合の要素
3.現地の実態を捉える視角
4.手掛かりとしての「全国区」型と「地方区」型——30年以上前の石川県加賀平野の実態調査が示唆するもの①
5.地域資源管理を巡る摩擦の発生と対応——30年以上前の石川県加賀平野の実態調査が示唆するもの②
6.おわりに
◆第1部 平坦・水田地帯における規模拡大の過程と耕地分散への対応
第1章 「地方区」型展開と「全国区」型展開——滋賀県湖北町(元長浜市)の大規模借地経営の15年
1.はじめに——農地流動化による構造改革達成地域としての湖北町
2.早くから自集落で農地集積に励むも後継者不在で規模拡大は停滞——1番農家——
3.兄弟が後継者として加わり法人化、トップレベルの担い手に成長——2番農家——
4.集落に貼りついた農地集積を活かして有機無農薬不耕起稲作を展開——3番農家——
5.後継者が就農し経営面積を倍増させた「全国区」型の大規模経営①——4番農家——
6.積極的な出作で規模拡大を図るも従業員の安定雇用が課題の法人経営——5番農家——
7.後継者が就農し経営面積を倍増させた「全国区」型の大規模経営②——6番農家——
8.おわりに——将来的に大規模借地経営は「全国区」型に向かっていく?
第2章 大規模借地経営の多様な展開と大規模集落営農の行方——石川県加賀平野にみる「全国区」型の規模拡大と「地方区」型の農地集積
1.はじめに——極端なケースの比較検討
2.A農産——「都市の棚田」の集積による規模拡大路線の行方
3.B社——農産加工を主軸に据えて中小企業に脱皮した経営の農地観・集落観
4.C農産——経営耕地分散をものともせず規模拡大に邁進
5.集落営農法人D社——効率的な農作業体制を実現、次の方向を模索
6.おわりに——どちらも一長一短か、「農法変革」の展望なき経営発展
第3章 都府県大規模個別経営の圃場分散の実態と背景——石川県川北町を事例に
1.課題の設定
2.事例農家を取り巻く環境
3.著しい圃場分散の理由と影響——農家A——
4.個別経営での面的集積の経緯と効果——農家B——
5.集落営農の土地利用——J集落・農家C——
6.考察——面的集積のプロセスと仲介の困難性
7.おわりに
第4章 大規模借地経営展開地域における広域的農地利用調整の意義と限界——静岡県旧磐田市南部地区の取組みを対象に
1.はじめに
2.磐田市の農業構造の推移
3.磐田市南部地区における農地利用調整の取組みの概要
4.事業推進主体の見解と地権者の理解
5.磐田市における大規模借地経営の現状——農地利用調整の受益農家を対象に
6.おわりに——大規模経営の展開と地域との関係
◆第2部 大規模経営の展開と地域資源管理
第5章 地域農業資源管理における大規模経営体の対応——「全国区」型のTD農産と「地方区」型のTK法人の比較
1.はじめに
2.TD農産の農業経営展開と地域資源管理——「全国区」型で経営規模を拡大した農業経営
3.TK法人の農業経営展開と地域農業資源管理
4.考察
5.まとめ
第6章 条件不利地域における大規模経営と集落の緊張関係——大分県臼杵市野津町
1.課題の設定
2.地域農業の概況
3.(株)西日本農業社の概況
4.各集落と西日本農業社の関係
5.獣害対策を契機とした組織化
6.まとめと考察
第7章 農業参入企業の経営展開と地域——中山間地域における農業参入企業の経営展開と地域農業資源管理
1.はじめに
2.根知村の概要
3.O法人の農業経営と経営耕地の拡大
4.根知村における地域農業資源管理
5.まとめ
終章 おわりに——本書を振り返って
あとがき