刊行物

日中韓農協の脱グローバリゼーション戦略 —地域農業再生と新しい貿易ルールづくりへの展望

日中韓農協の脱グローバリゼーション戦略 —地域農業再生と新しい貿易ルールづくりへの展望

吉田成雄・柳 京熙 編著 定価2,600円(+税) A5判上製/248ページ

 協同組合の固有の価値の発揮で新自由主義とグローバリズムを超える地域発展戦略を描く。
 日本・中国・韓国の農業協同組合の比較を行い、性格が異なる3カ国の農協が東アジアのくくりで協力していく展望を描く。それぞれの国で地域農業と地域活性化に寄与し、3カ国の農協が参加する、柔軟で互恵的な農産物貿易ルールづくりへの挑戦を提起。

【目次】
まえがき

◆第Ⅰ部 日本の農業協同組合の発展経過と今後の展開方向

序章 新しい時代に向けた農協の改革のために
第1章 日本の農協の発展経過
1.日本の農協の概要
2.農協に対する批判——何を問題としているのか
3.批判を真摯に受け止めつつも──優れた農協の実践から学ぶ

第2章 愛知県安城市における農業・農協の発展経過
——JAあいち中央(旧安城市農業協同組合)
1.はじめに
2.戦前の産業協同組合運動から戦後の農協運動へ
3.「日本デンマーク」といわれた農業の姿と展開
4.戦後の安城市農業と安城市農協の活動
5.農協合併の意義と成果
6.まとめ——若干の示唆

第3章 千葉県・JA富里市の地域農業発展戦略
1.これまでを顧みる
2.組合員と販売事業の変遷
3.まとめ——若干の示唆

第4章 ホクレン販売事業にみる経済連の組織機構と機能——野菜と米を中心として
1.はじめに
2.市場の変動に対応した連合会組織機構の再編と販売機能——青果事業
3.北海道米のブランド化に向けた生産者、農協、行政のチームワーク——北海道米食味向上の取組み
4.おわりに——機能ありきの経済連を体現

第5章 6次産業化とJAの役割
1.農業の6次産業化とは
2.6次産業化と政策
3.需要創出型イノベーション
4.「1×2×3=6」の思い——平田牧場の6次産業化
5.農業、農村の6次産業化の先端を見る
6.まとめ——イノベーションはどのように引き起こされるのか

終章 農協の今後の展開方向を考える——組合員の意を汲んだ農協の経済的行為と生命共同体
1.事業化と組合員対応の相乗効果を出す事業方式への転換
2.農協の役割を巡る議論
3.今後の展望

◆第Ⅱ部 東アジアにおける農協の発展戦略——韓国・中国の現場を踏まえて

第1章 韓国総合農協の歴史的展開過程
1.韓国農協の歴史的展開過程
2.韓国農協における系統組織体系とその特徴
3.事業構造改編

第2章 韓国農協の発展戦略としての「地域総合センター」
1.「地域総合センター」の出現とその背景
2.「地域総合センター」としての新たな戦略

第3章 「地域総合センター」としての高山農協の取組み
1.地理的位置と農協の経営状況
2.「広域エコ団地」としての親環境農業への取組み
3.「地域総合センター」としての地域の有機的連携

第4章 中国農民組織化の到達点と今後の行方
1.社会主義中国の農民協同組合運動
2.中国農民組織政策の推移と位置づけ
3.中国農民組織の核心的な課題——「戴庄村モデル」の意義
4.「戴庄村モデル」(江蘇省句容市)の意義

終章 「農民の組織化と経済発展」の視点から日・韓・中の農協を見る 

◆第Ⅲ部 東アジアの農協の将来への期待

第1章 日本・韓国・中国の農業協同組合が果たす役割とその将来への期待

第2章 東アジアの農協への期待、そして将来像

◆補論 新たな農協の発展のための理論的試み

第1章 変貌する世界経済と真に互恵的な国際貿易ルールづくり
1.覇権国の衰退・世界の多極化とTPP問題の急浮上
2.日韓の農協間の協調で「より柔軟で、双方が思いやる互恵的な」貿易ルールづくりを

第2章 新自由主義と哲学的背景の考察
1.幻想をふりまいた新自由主義経済の失敗
2.非理性を根拠にした偽りの「普遍」の支配
3.存在の価値と意味を包括的に捉える

第3章 協同組合の新たなアイデンティティー
1.二項対立の前提を自ら廃棄すべき
2.協同組織のアイデンティティー
3.結論

あとがき