競争社会と協力社会を逆転させる!(にじ 2017年 夏号 No.659 オピニオン)
競争社会と協力社会を逆転させる!
津田 直則
にじ 2017年 夏号 No.659
現代は競争社会です。そして競争社会は資本主義社会の一部です。この競争社会は資本主義の功罪の功にも罪にも関係しています功では豊かな社会を形成しました。しかし罪では、強い者の社会を形成し支配、抑圧、搾取、貧困を広げています。この罪の部分を無くさなければ世の中は平和になりません。無くすのは可能でしょうか。これがここでのテーマです。
競争システムに代わるシステムには「協力システム」があります。競争システムとは、同一の目的に向かって経済主体が私的利益を競い合うシステムのことで、負けた者が排除される仕組みです。これに対して協力システムでは、協力し合って共通の目的を実現するため勝ち負けがない共存システムです。1980年代までの日本資本主義ではそのシステムの中に協力システムが存在していました。戦前の財閥が戦後は解体され、企業グループとして再編され、銀行が中枢に位置して協力し合う体制をとっていたことがそれです。バブル崩壊後はこの体制は崩壊していきました。
しかし現在の日本には別の形の協力システムが生まれています。各地で市民が協力しあって地域の課題を解決するという仕組みがれです。競争社会で生まれた諸問題、例えば過疎、貧困、心身症の問題などは競争システムでは解決できません。市民は協力しあってこれを解決しようとしているのです。市民や市民団体が横につながりネットワークを形成している場合もあります。
海外では協力システムがもっと進んでいるケースがあります。非営利組織の集団で、社会的経済ないし、社会的連帯経済と呼ばれる世界です。例えばモンドラゴン協同組合やイタリア協同組合の世界では、「連帯」という用語は協力システムの形態をとっており、雇用保障や報酬の公正等の理念を実現するシステムなのです。
私は日本で地域ネットワークと非営利組織が集まる府県単位の広域ネットワークをつなぎ、クモの巣のようなネットワークで協力し合えば、協力システムを基礎にした市民社会ができると考えています。これにより競争システムと協力システムの逆転が可能になります。