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人生100年時代を「農」とともに(にじ 2017 冬号 No.661 オピニオン)

 

人生100年時代を「農」とともに

米本 雅春
にじ 2017年 冬号 No.661

 先日、農業委員会事務局から封書が届いた。所有する3畝半(350m2)程の「田」に対する農地の「利用意向調査」である。この調査は農地法で定めるところにより毎年1回実施され、「現に耕作の目的に使用されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地」について、利用意向を把握するものだ。
 地元に現住所がなく、昨年までは耕作を依頼していたが、今年は荒廃農地化していたためであろう。周辺の耕作者・所有者にも聞いたが、意向調査が届いたのは自分だけらしい。家族と相談して回答するとともに、まずは耕作意思があることを周りにも示しておくため、草刈りだけはしておこうということになった。只今のところ春には何を作付けしようかと楽しみにして思案中である。

 さて、全国の荒廃農地は年々増加し、平成27年には28.4万haになっている。原因は、高齢化、労働力不足が最も多く、次いで土地持ち非農家の増加が多い。
 農地や資金およびノウハウなど就農に必要な情報が集めやすくなってきているなかで、老若男女を問わず多様な人材が多様な目的で、農業あるいは「農」に関心を持ってきている。農業を関連付けたインターンシップを募集すれば多くの大学生が集まるし、退職後小さく農業をやり始めた人もいる。

 また、最初から認定農業者等の担い手(事業者)を目指し新規参入する人もいれば、そうでない人もいるだろう。例えば小規模な農地しか所有していなくとも、集落に暮らす多数が「農」を楽しみ「協同」で野菜などを直売所に出荷できる体制が整えば、直売所は事業者となり、出荷した人ははからずも農業者だ。
 行政等の就農支援も厚くなり、望めば誰もが農業あるいは「農」に向き合う機会(チャンス)が到来してきている。農業あるいは「農」とどう向き合うかについては、多様なかたちがあってしかるべきだと思う。所得向上・確保を目的に農業者として働く、「農」を楽しむことにより心豊かに暮らすなど、各人各様いろいろな目的があってよいと思う。

 人生100年時代をどう生きるかが話題になっている。政府も「人生100年時代構想」を打ち出そうとしている。長寿化時代の人生戦略として、「農」との関係性のなかで健康寿命を延ばし心豊かに暮らす手もあり、また論語(微子第十八)の隠者の話ではないが心静かに生きる晴耕雨読の生活もありだろう。
 人生100年時代、自らのライフスタイルを「農」とともに創造していくことは、有効な選択肢の一つだと思う。