国際連携

〈ICAソウル大会レポートNo.3〉
ICAソウル大会3日目、日本から4人の司会者・パネリストが登壇しました(2021年12月3日)

 ICAソウル大会3日目は、前日最後に行われた分科会3「・・・に向けて、協同組合のアイデンティティにコミットする」の報告から始まり、続いて4クール目となる全体会4「協同組合のアイデンティティを実践する」、ラウンドテーブル4「SDGsの達成に向けて、私たちのアイデンティティを実践する」、分科会4「・・・で協同組合のアイデンティティを実践する」と進みました。

 ここで昼食休憩となりましたが、この時点で、大会参加者にコロナ陽性者が出たことが判明し、参加者は会場あるいはホテルの部屋で一旦待機のアナウンスがありました。その後、全体会4「分科会4から何が浮かび上がったか?各分科会報告者インタビュー」がオンラインで行われたところで再度中断となりました。

 その後、同日夜にICAより参加者に対し、「オンラインでの閉会式を準備しており、その日程は近いうちに知らせる」との連絡がありました。

 オンライン閉会式については、ICAから連絡があり次第、こちらのページでもお知らせしていきます。

 思わぬ事態となった大会最終日ですが、実参加・オンライン参加あわせ1570名(韓国から800名、韓国以外から770名。うち実参加はそれぞれ650名・290名)が参加した今大会で議論された内容はたいへん濃いものとなりました。今後、日本国内における議論に活かしていきたいと思います。

 大会開催にあたり、ご尽力いただいた韓国の協同組合関係者、ICA関係者、世界各国の協同組合の皆様に、あらためて感謝申し上げます。

 

【全体会:分科会3から何が浮かび上がったか?各分科会報告者インタビュー】

 3クール目に行われた各分科会の報告がなされた後、コーディネーターから「次のステップについて、どのように考えるか?」という質問が、なされました。分科会報告者からは、ローカルなコミュニティのストーリーがグローバルに広がり、グローバルな運動からローカルなコミュニティが刺激を受けるという循環が大事、といった指摘がなされました。

 

【全体会4:協同組合のアイデンティティを実践する】

続いて4クール目となる全体会4が「協同組合のアイデンティティを実践する」をテーマに行われ、極貧と人権に関する国連特別報告者オリビエ・デシューター氏と、ベルギー・ルーベン大学ナジク・ベイシェナリー氏が講演を行いました。

オリビエ・デシューター氏は、「成長=GDP、まず経済成長を実現してから、環境を修復し、貧困に対処し公共サービスや社会保障を行う、というこれまでの発展パターンは、成長の名のもとに収奪的な経済をつくってきた」「協同組合はこれまでとはちがった発展モデルの形成に貢献できる」「協同組合は、長期的な持続可能性、人的資本、自然資本、社会資本を大切にしてきたし、それが現在の営利企業にも影響を与えている」「営利企業でも最近このようなことを意識するようになってきたことは確かだが、それも株主利益を最大化するという範囲での行動であり十分でない」「経済それ自体が民主的に運営され、コミュニティに責任を持つものになれるか。それがSDGsの実現にとって重要」「協同組合には今こそ世界に送るメッセージがある。生態系から資源を収奪しない、大量廃棄しない、労働者を搾取しない、そういう『別のビジネスのやり方がある』というメッセージだ」と話しました。

また、ナジク・ベイシェナリー氏は、「協同組合は持続可能な開発のための変化をどのように促進できるか」と題して、ICAが今年行った研究結果を発表しました。

 

【ラウンドテーブル4:SDGsの達成に向けて、私たちのアイデンティティを実践する】

全体会に続いて、ICA住宅協同組合委員会会長アンダース・ラーゴ氏(スウェーデン)、ICA保健協同組合委員会会長カルロス・サルコ氏(スペイン)、国際協同組合保険連合事務局長ショーン・ターバック氏(イギリス)、産業労働者・熟練工業者・サービス生産者協同組合国際機構副会長ジュゼッペ・グイリニ氏(イタリア)、そして日本から福島大学食農学類教授小山良太氏がパネリストとして登壇しました。

 各パネリストから、それぞれのセクターでどのようにSDGsの達成に向けてアイデンティティを実践するか、の報告がなされ、「住宅は世界的には不足しており、約18億人がスラム街などで生活している。そのために住宅協同組合は役割を果たしたいが、資金も必要で政府の協力は必須。」「リサーチは必要。指標を作成しなければならない。」「SDGsは共済セクターにとって“ギフト”。 ICMIFでも指標を作成しており、『ウォッシュ』と言われないレベルの取り組みを目指したい。」といった指摘がなされました。福島大学の小山教授からは、東日本大震災と原発事故後の復興に、協同組合間連携や大学との連携で取り組んできた福島での経験を踏まえ、「恒常的な協同組合間連携組織を地域につくったことが、原発事故対策で生きた。さらに、大学など協同組合だけでなく幅広い連携が大切。」と話しました。

全体会4で報告する小山福島大学教授
会場を埋めた世界からの参加者

 

【分科会4:・・・で協同組合のアイデンティティを実践する】

コーヒーブレイクをはさみ、「・・・によって、協同組合のアイデンティティを強化する」を共通テーマに、分科会4が開催されました。5つの分科会では、

4.1「働きがいのある仕事で、協同組合のアイデンティティを実践する」
4.2「アクセスしやすい医療や社会サービスで、協同組合のアイデンティティを実践する」
4.3「食料安全保障の向上で、協同組合のアイデンティティを実践する」
4.4「手頃な価格の住宅やエネルギーで、協同組合のアイデンティティを実践する」
4.5「社会的連帯経済のなかで、協同組合のアイデンティティを実践する」

をテーマにディスカッションが行われました。

 これら5つの分科会のなかで、日本の協同組合からは、4.1「働きがいのある仕事で~」では日本労協連の中野理事がコーティネーターを務め、4.2「アクセスしやすい医療や社会サービスで~」では日本医療福祉生協連原前理事がパネリストとして、4.3「食料安全保障の向上で~」ではJA全中中家会長が同じくパネリストとして、それぞれ登壇しました。

 4.1「働きがいのある仕事で~」で中野理事は、冒頭、協同組合に共通する特徴として、2008年の金融危機においても雇用を守ったレジリエンス、職員の在職期間の長さ、上級管理職と一般職員との賃金格差が小さいことを挙げました。また、協同組合での働き方には自営者、被雇用者としてだけでなく、自ら仕事起こして組合員となるワーカーズコープのような多様なスタイルがあること、そうした中で障がい者や女性など社会的弱者の雇用にも貢献していることを指摘しました。

 同分科会では、インド、ベルギー、スイス、韓国、イランの協同組合から取り組みの報告が行われました。そのうちのいくつか例を紹介します。

 最初に報告を行ったインドのSEWAは、女性による100以上の単位組合の集合体です。インドにおいて最も搾取され弱い立場にある女性に組織化を通じて雇用の安定を提供しています。これまでの活動で得た教訓として、教育の大切さ、集まることで規模を拡大することの重要性、デジタル化の必要性などがあげられました。

 ベルギーのSmart協同組合からは、芸術家などのフリーランサーを組織化するうえでの課題として、自由と平等のバランスを保つことの難しさが報告されました。

 また、韓国の協同組合からは、ワーカーズコープを設立して家事労働者を組織化する中で、教育を通じたエンパワーメント、総会などの意思決定プロセスへの参加を実現していったことが紹介されました。

 中野理事は、最後に「協同組合に関する法律や制度は、国や地域によって異なるものの、ディーセントワークの実現や労働者の権利保護といった共通点が確認できた。これはSDGsで言うと直接的にはゴール8(働きがいも経済成長も)の達成につながる取り組みだが、ゴール1(貧困をなくそう)、ゴール4(質の高い教育をみんなに)など多くの課題にも密接な関係がある。協同組合がもたらす働き方には多様性があり、SDGsとの関連が強いことが示された」と同分科会を締めくくりました。

 4.3「食料安全保障の向上で~」では、JA全中の中家会長がパネリストとして参加しました。

近年の気候変動や自然災害の頻発、地域の過疎問題等のもと、食料システムの持続可能性と協同組合の役割発揮が地球規模の課題となっています。同分科会では、欧州、北米、アジア、アフリカの協同組合代表者や研究者、FAO代表6名によるパネルディスカッションが行われました。

中家会長は、食料・農協をめぐる今後20~30年の方向について問われ、①国内自給、「国消国産」を基本とした食料安全保障、②中央集権型から分散型社会への移行、③協同組合原則である「相互扶助」や「地域社会への貢献」の再評価、④環境に調和した農業生産の推進、⑤「伝統食」など持続可能な消費パターンへの移行を主張しました。

 また、農協組織としてどのようにSDGsに貢献していくべきかとの質問に対し、中家会長は、食料安保のため「生産基盤の確立が重要」であるとし、その実現に向け「農協として農業所得の増大への取り組みが必須」であると訴えました。

 さらに、脱炭素化をめざす日本政府「みどりの食料システム戦略」を紹介しながら、「具体的目標である有機農業の強化は、生産者のみならず消費者の理解なしには実現できない」として、農協として生協との連携強化や、国民理解促進活動に取り組んでいくことを主張し、参加者から広い賛同が得られました。

 

【大会の中断】

 昼食休憩に入る時点で、大会参加者にコロナ陽性者が出たため参加者は会場あるいはホテルの部屋で一旦待機するよう、アナウンスがあり、大会はいったん中断しました。

 

【全体会:分科会4から何が浮かび上がったか?各分科会報告者インタビュー】

 その後、定刻より遅れて、全体会4「分科会4から何が浮かび上がったか?各分科会報告者インタビュー」がオンラインで開催され、分科会からの報告が行われました。

 

【再度の中断】

しかしながら、分科会からの報告の終了とともに、大会は再度中断しました。

 

【今後の予定】

 その後、同日夜にICAより参加者に対し、「オンラインでの閉会式を準備しており、その日程は近いうちに知らせる」との連絡がありました。

 オンライン閉会式については、ICAから連絡があり次第、こちらのページでもお知らせしていきます。

以上(文責:JCA事務局)

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